特別連載Vol.8

LEVIʼS®
MONTHLY
MUSICIAN

LEVIʼS®MONTHLY
MUSICIAN

collaborated with SWITCH

高岩遼 TAKAIWA RYO

エンターテイナーの矜持

ワイルドな色気とチャーミングなユーモアを兼ね備えた男、高岩遼。
音楽と真摯に向き合い、人々を楽しませるために全力を傾ける彼が心の内に秘めた思い

1873年5月20日――すべてのジーンズのオリジン(原点)が誕生したその日からまもなく150年を迎えようとしている。その記念すべき2023年に向け、Levi’s®のアイコンである501®と、自身の確固たる“スタイル”を持ち作品を生み出し続けているミュージシャンをフィーチャーした特別連載。

自身がオーナーを務めるバー「Brother」での撮影を終えた高岩遼はまず、自身のルーツとなったカルチャーとの出会いを語り始めた。
「ママが映画や音楽、服が好きな人だったので、その影響で幼い頃からアメリカのカルチャーに触れてきました。僕は岩手の宮古出身で、地元にオシャレな洋服屋はそんなになかったのですが、『Miss Tiee』という古着屋があり、小学生の頃からそこで服を買っていました。リーバイス®との出会いもその頃だったと思います。僕の音楽的な原点はスティーヴィー・ワンダーとレイ・チャールズ、そしてフランク・シナトラでした。彼らの音楽を聴いた時、なぜか涙が止まらなかった。そこからソウル、ジャズ、ヒップホップといった音楽にのめり込んでいきました。高校生の頃は全身バチバチのB-BOYスタイルで駅前でスケボーやダンスをしながら部活動に励み、一方でジャズやブルースも愛聴していた。その結果、今の僕があるんです」
 高校卒業後、音大への入学を機に上京した高岩は、ジャズボーカリストとしてスポットライトを浴び始め、SANABAGUN.、THE THROTTLEでの活動も開始。そんな彼と並走し、サポートしてくれたのがリーバイス®だった。
「THE THROTTLEがずっと続けていた路上ライブのファイナルを新宿でやった時、リーバイス®から路上に花が届いたんです。その時は嬉しかったし、同時にリーバイス®というブランドの粋を見た気がしました。リーバイス®は昔から質の高いデニムを作り続けている、ミュージシャンに優しいブランドだなと思っています。今年のLevi’s® Vintage Clothingの秋冬新作のテーマが“ジャズ”ということでルックブックも見せてもらいましたが、“ジャズい”服がたくさんあって最高だなと思いましたね」

理論と本能

高岩自身のルーツからもわかる通り、現在の彼の音楽活動は多彩だ。ヒップホップからソウル、ジャズ、そしてロックンロールまで、複数のバンドやプロジェクトで並行して活動しながら、圧倒的な歌声と存在感でもって聴き手を魅了していく。しかし一方で、一体どれが彼の本質なのか、時にわからなくなることもある。「自分の中ではどのジャンルも全部同じで、ただ色味が少し違うだけという感覚なんです。その理由は全ての音楽に共通する“セブンスの響き”にあります。たとえば鍵盤でドレミの音を弾くと、とてもクラシカルな響きになる。でもそこに一音足して鍵盤を弾くと、セブンスの響きとなる。ブルース・フィーリングとも呼ばれるこの響きこそが、僕が今やっている全ての音楽に共通しているものなんです」さらに高岩は続ける。「僕はこのロマンティックな現象を高校の頃に文献を漁りながら理解しました。音大でも様々な授業を受けましたが、最終的に僕が学んだのは、“ジャズは難しい”ということと、“音楽とは奇跡のようなものである”ということ。空気が振動し、それが人の鼓膜を揺らすことで生まれる音というのは目に見えないもので、だからこそ神秘的。そんな音を音楽という形にしていくには、時代考証をし、時に音楽を理論的に考えていく必要がある。それと同時に本能的であることも大切にしています。僕はアカデミックと本能のバランスを上手く取りつつ、決して頭でっかちにならないよう気をつけながら、自分なりの音楽を提示していきたい」しかし、自分自身は純粋なミュージシャンではないのだと高岩は言う。
「僕は音楽だけなくファッションや場所づくり、様々なカルチャーも含めた表現を続けてきた。だからやはり自分の肩書きは“エンターテイナー”なのです」

そしてSANABAGUN.とTHE THROTTLEが来年で結成10年を迎えようとしている今、高岩はこれまで培ってきたものを糧に、新たなステージに向かおうとしている。「20代の頃の自分はナイフのように尖っていたけど、30代になった今は様々な人との出会いを通して大人になり、カッコつけ方も変わってきたように思います。そして今は、元々自分が東京に出てきた目的はスターになるためだったという原点にあらためて立ち戻っている感覚がある。だから来年はぶちかましてやろうと思っています」 最後に高岩遼のSTYLE OF ORIGINは何なのかを訊いた。「自分の中で常に変わることがないのは、“俺が高岩遼であること”。それが答えです」

STYLE OF ORIGIN

「Sofa」高岩遼

2018年リリースのソロアルバム『10』に収録。「祖父と祖母はよく2人でソファに座っていました。祖母が亡くなってからは祖父がひとりでそこに座り、僕が弾くピアノを聴いていたんです。その時の祖父の気持ちを想像しながら高校3年の時に作りました。僕は歌を通して愛を伝えていきたい。その思いの原点がこの曲にあるような気がします」

CD ジャケット

THE MOMENT THAT CHANGED EVERYTHING わたしを変えたモーメント

レイ・チャールズとの出会い。
「We Are The World」を歌う彼の姿
を目にした時、雷に打たれました。
そして今、僕はここにいます

高岩遼

1990年岩手県生まれ。音大在学中からSANABAGUN.、THE THROTTLEなどのバンド活動を始め、ソロとしても活躍。東京、三軒茶屋にバー「Brother」、トイストア「good junk store Brother」をオープンさせた

501®ORIGINAL

1950年代、リーバイス®のジーンズは“自由と反抗のシンボル”として若者たちの支持を集めた。今回高岩が着用したのは1955年製の501®を再現した1本。またボーダーのTシャツもリーバイス®で、Gジャンはかつてリーバイス®でオーダーメイドしたもの
衣装クレジット
1955 501® ¥35,200 / Levi’s® Vintage Clothing

Credit

PHOTOGRAPHY:INOHARA YU
TEXT:SWITCH

人生を変えたモーメント