Made in Japan スペシャルインタビュー第2弾

Yataro MatsuuraYoshiaki Irobe

「くらしのきほん」主宰・エッセイスト
松浦弥太郎氏が語る
「MADE IN JAPAN COLLECTION」の魅力

2002年に中目黒で「COW BOOKS」を立ち上げて新しい形の書店を提案し、「暮しの手帖」の編集長を勤めた後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げて日々の暮らしの知恵と学びを発信している松浦弥太郎氏。実は筋金入りのデニム好きであり、リーバイスのファンなのだとか。そこで、今回、ジーンズにまつわる思い出とともに、リーバイスの魅力を語っていただきました。

小学生の頃に 手に入れた “本物”のジーンズ

「初めて“ジーパン”を意識して穿いたのは小学5年生の時でした。林間学校に着ていく服を買うために親からもらったお小遣いを握りしめて中野ブロードウェイのジーンズショップへ行ったんです。そこは新品だけじゃなく、ワゴンセールのような形で古着も売っていた。いかにも買ったばかりのジーパンを穿くのが恥ずかしかった僕は、お店の人にすすめられてボタンフライの古着を買いました。

それが、リーバイスの503のボーイズサイズだったんです。新品とさほど変わらない値段で古着を買ってきたため、親からは怒られましたが、子供ながらに本物を手に入れたという満足感がありました。とても気に入っていたのですが、成長してすぐに穿けなくなってしまいました。
70年代の終わり頃、高校を中退してアメリカに渡ってからはジーンズばかり穿いていました。フリーマーケットやスリフトショップを回ってデッドストックのジーンズを探して穿いたり、お金に困ったらそれを売って旅費にしたり。そうして様々なジーンズに触れるうちに、素材やシルエット、ディテールの違いがわかるようになりました。

穿く人への気遣いが 伝わるものづくり

「ジーンズに白のオックスフォードのボタンダウンシャツとレザーシューズを合わせるのが、僕の定番のコーディネートです。色の濃いジーンズはジャケットなどフォーマルな服に合わせて仕事で使い、色が落ちてきたら普段着としてカジュアルに穿くことが多いですね。

いま穿いている『MADE IN JAPAN COLLECTION』の『551Z』はゆったりしたシルエットとエイジングのおかげでラフに見えますが、綺麗にプレスしたシャツなどを合わせるとかえって大人っぽくなる。僕が普段から気をつけているのは、どんな服装をするにしても、靴とベルトと時計だけはしっかりしたものを身につけること。そうすることで全体として様になります。これはアメリカにいた時に学んだ服装術です。
昔のアメリカ製のリーバイスのラフな作りも魅力的でしたが、『MADE IN JAPAN COLLECTION』の丁寧な仕事も素晴らしいですね。ジーンズらしい武骨さがありながら、実際に足を通してみるととても快適で穿く人への気遣いが伝わってくる。その繊細なバランス感覚は日本人ならではのものだと思います。しかし、どこで作られていてもやはり、リーバイスはリーバイス。その本質は変わらないと思います。

ジーンズは歳を 重ねるほどに 似合うもの

「子供の頃からずっとリーバイスを穿いてきましたが、この歳になってようやく似合うようになったと感じます。日本の着物と同じように、年齢を重ねるほど着こなしが身について様になるものです。
リーバイスのジーンズは、僕にとってはもはや暮らしに欠かせない道具のひとつであり、体の一部のようなもの。

自分らしさを表現できる数少ない衣類でもあります。思い返せば、僕はいつもリーバイスのジーンズを探していたような気がします。子供の頃からの憧れがそのままいまも続いているような。簡単に言うとすっかりリーバイスのファンになってしまっているんだと思います。

グラフィックデザイナー・アート
ディレクター
色部義昭氏が語る
「MADE IN JAPAN COLLECTION」の魅力

「Osaka Metro」のCI(コーポレート・アイデンティティ)をはじめ、公園や大学、美術館といった公共施設のVI(ビジュアル・アイデンティティ)やサイン計画を数多く手がけてきたグラフィックデザイナー・ アートディレクターの色部義昭氏。色や形に極限までこだわり、場にふさわしい緻密なデザインを生み出す彼の感覚は、リーバイスの「MADE IN JAPAN COLLECTION」をどのように捉えるのか。お話をうかがいました。

原材料のような ラフな素材感に 惹かれる

「元々、紺色や⻘色が大好きだったこともあり、インディゴカラーのジーンズはよく穿いていました。若い頃は個性の強いダメージデニムを穿いたこともありましたが、年齢を重ねて自分自身がエイジングされるに従って、逆にシンプルで清潔感のあるものを身につけたくなりました。以前は無頓着だったのですが、髪を整えたり、洋服を丁寧に洗ったり、身綺麗にするように意識が変化してきたんです。

そのため、最近ではワンウォッシュ程度の濃い色のジーンズを穿くことが多いですね。僕がジーンズに感じる一番の魅力は素材感です。キメ細かく磨かれた石壁の魅力があるように、コンクリート現しのラフな表情の壁にも魅力を感じる。ジーンズは後者にあたりますね。感覚的には原材料に近いプロダクトというイメージです。そんな風に外見はラフですが、実際に身につけてみると心地良いというギャップもジーンズの魅力です。人の着こなしを目にしてよく思うのが、高価な服を着ているだけの人よりも、気に入った服を気持ち良さそうに着ている人の方が幸せそうに見えるということ。僕自身もその感覚を大事にしながら、服を選んでいきたいと思っています。

“目盛り”の細かさが 感じ取れる 日本のものづくり

「日本のものづくりは、“解像度が高い”という印象があります。例えば、本の表紙をデザインするとなると、膨大なバリエーションの 中から理想の紙を選べるわけです。しかもそれが見本帳としてコンパクトかつ綺麗にまとまっている。そんな状況は実は日本にしかありません。また、色についてもそれぞれに固有の名前をつけて、そこに情感を込めたりしているのも日本ならでは。

そういう “目盛り” の細かさのようなものが、『MADE IN JAPAN COLLECTION』からも感じ取れます。 いま穿いている『511』も見た目が濃紺なので少し硬そうに思いましたが、いざ足を通してみると肌触りも心地良く、先ほど穿いたばかりなのに家から穿いてきたかのように体に馴染んでいます。タブやレザーパッチもインディゴで統一されており、シンプルで清潔感のある印象になっているところも気に入っています。

アップデートを 繰り返して普遍的な プロダクトになる

「僕が手がけているサインにしろ、ジーンズのようなプロダクトにしろ、デザインは常に限られたスペースの中で行なう作業になります。その点、この『511』もそうですが、日本製のプロダクトは制約の中で最大限に繊細に作り込まれているように感じます。また、僕は美術館のサイン計画のデザインもさせていただいていますが、サインが作品より目立ってしまうのは当然ダメなわけです。

そのため、強弱や場所との関係性を意識しながらデザインしていますが、そうしたバランス感覚も『MADE IN JAPAN COLLECTION』からは伝わってきます。ファッションにもデザインにも共通することですが、流行に左右されないと言いながらも、いまを生きる人の気持ちをしっかりつかむことが必要です。⻑年愛されてきた普遍的なプロダクトやデザインも、まったく変わらず同じままかというとそうではなく、試行錯誤しながら時代に合わせて細部をアップデートしてきたものも多々あります。リーバイスのジーンズというプロダクトも、『MADE IN JAPAN COLLECTION』のような新しい挑戦を繰り返してきたからこそ、現在に至るまで普遍的な存在であり続けているのではないでしょうか」